気づいたら来週で今年の業務も終わりということに気づきました。今年もいろいろ・・・あったか?
今回は、最近色々と辛くなってきたので、初めてProtocol Buffers・・・というかProtocol Buffers languageを利用して、サーバー側=OCamlとクライアント側=TypeScriptで型定義を共有していきたいと思います。
Protocol Buffersとは
もう公式を見ていただくのが早いと思いますが、一応自分の言葉で説明します。既に知ってるわ!という方はすっ飛ばしてください。
Protocol Buffersとは、ザックリ言うとデータ構造を効率的にシリアライズするための仕様です。gRPCで利用されるデフォルトのシリアライズフォーマットであること、Googleが長年利用していることで有名です。単にProtocol Buffersとだけ言うとあくまでシリアライズの仕様だけですが、Protocol Buffers languageという、各種言語向けのプロトコルを生成するための言語がセットになっています。
今回の目的はこのProtocol Buffers languageです。OCamlにはgRPCの実装は存在しませんし、今回はgRPC自体不要です。
なぜProtocol Buffers languageを使うのか?
Protocol Buffers languageは、プログラミング言語に依存しないデータ構造の定義用言語です。こういったものはあるようで意外とありません。個人的に使った(と言えるかどうかは・・・)ことがあるのはCORBAくらいです。
より一般的にはIDLと呼ばれる言語ですが、最近はAPIの隆盛から、OpenAPIがこの役割を果たしていることが多い印象です。REST APIを作成する場合は、OpenAPIを使うのがベターな選択でしょう。
ただ、今回は データ構造だけ 欲しいのです。そもそも通信方法がWebsocket + JSON-RPC、という形になっているので、OpenAPIが使えないということもあります。また、Protocol Buffers language自体はgRPCに対する注目の高まりもあり、色々な言語に対してコンパイラが提供されているというのも、今回選択した理由になります。
protoファイルからコンパイルする方法
さて、基本的にprotoファイル(protocol buffers languageのファイル拡張子から、protoファイルと呼ばれます)から定義やスタブを生成する際、protocというコンパイラが必要になります。公式のリポジトリでは、メジャーな言語については追加で何か追加すること無く、実装を生成できるようになっています。
https://github.com/protocolbuffers/protobuf
・・・しかし、OCamlはマイナー言語ですので、基本Googleが関わるprojectには含まれていません。ところで、Protocol Buffersのコンパイラは、拡張を書くことで、生成先の言語を追加できるようになっています。TypeScriptもこのpluginがあります。
https://qiita.com/yugui/items/87d00d77dee159e74886
OCamlでは、 https://github.com/issuu/ocaml-protoc-plugin というリポジトリで公開されているpluginを利用することで、protoファイルからOCaml用の定義を生成することが出来ます。 TypeScriptでは、https://github.com/improbable-eng/ts-protoc-gen を使うのが良いかと思います。これもpluginです。
protocは、これらのpluginを、CLIに渡されたパラメータから判断して呼び出しを行います。TypeScriptの場合は --ts_out
というパラメータを使った時、 protoc-gen-ts
というpluginを呼び出す、という実装になっているようです。
OCamlでも同じようにして生成できます。
実際に使ってみた
https://github.com/derui/sxfiler/tree/protocol-buffer
自分で実験用に作っているツール上で使ってみました。まだ作業中ですが、TypeScript/OCamlの両方共、自動生成した型を利用しています。OCamlの方はあんまり違和感のない定義になっていて、かなり使いやすいです。ただ、ProtocolBuffers languageのversion3(proto3)では、ある項目が必須である、ということをプロトコルの定義だけでは保証することが出来ないので、optionのハンドリングを必ずやる必要があります。
TypeScript側は・・・恐らくJavaScript向けのAPIにTypeScript向けの .d.ts
ファイルを追加した感じなので、使い勝手としてはあんまり良くありません。自動生成されたServiceとかから使われるのがメインなので問題ない、という判断なのかもしれません。
なお、生成はMakefileからやっています。
# Path to this plugin
PROTOC_GEN_TS_PATH = ./node_modules/.bin/protoc-gen-ts
# Directory to write generated code to (.js and .d.ts files)
TS_OUT_DIR=./src/ts/generated
PROTO_FILE_DEPS += bookmark.proto
PROTO_FILE_DEPS += completion.proto
PROTO_FILE_DEPS += configuration.proto
PROTO_FILE_DEPS += filer.proto
PROTO_FILE_DEPS += keymap.proto
PROTO_FILE_DEPS += task.proto
PROTO_FILE_DEPS += types.proto
define generate_for_ocaml
protoc -I src/protobuf --ocaml_out=src/ocaml/server/generated \
--ocaml_opt='annot=[@@deriving eq, show, protocol ~driver:(module Protocol_conv_json.Json)]' \
src/protobuf/$1
endef
define generate_for_typescript
protoc \
-I src/protobuf \
--plugin="protoc-gen-ts=${PROTOC_GEN_TS_PATH}" \
--js_out="import_style=commonjs,binary:${TS_OUT_DIR}" \
--ts_out="${TS_OUT_DIR}" \
src/protobuf/$1
endef
.PHONY: generate
generate:
$(foreach f,$(PROTO_FILE_DEPS),$(call generate_for_ocaml,$f))
mkdir -p $(TS_OUT_DIR)
$(foreach f,$(PROTO_FILE_DEPS),$(call generate_for_typescript,$f))
なぜMakefileからやっているのかと言うと、OCamlはdune、TypeScriptはpackage.jsonなりからscriptを呼び出したりしてもいいんですが、なんとなくprotoファイルに関しては生成先をひとまとめにしたかったためです。これがTypeScriptだけ、とかOCamlだけ、とかならMakefileでは無かったかもしれません。
ProtocolBuffers(というかプロトコル定義)は便利
ProtocolBuffersを使ったバイナリ転送を使わなくても、わりかし便利に使えました。これからのシステム間で型定義を共通化する必要性がある場合のfirst choiceにしてもいいかもしれません
ただ、protocとpluginを入れるのが面倒だったり、実際にチーム開発をする場合などにはもっと考えることがあるのは間違いありません。同じリポジトリで管理するのか、生成したファイルをcommitするのか、とかですね。
とりあえず使う分には割と気軽に使えるので、ちょこっとだけ導入とかも検討してみちゃーどうでしょうか。将来的にgRPCとかProtocolBuffersを使う時に楽になる・・・かも?